はざま

心臓の高鳴り
経験という言葉にしてしまうことは、あまりに簡単すぎる。
まあいいや、とりあえず書いてしまえ。




土曜日、とあるご縁でチックスチックスのライブに。
女性4人のグループで、今回のライブからコリアンの子が入り5人になった。
500人くらいのファンが集まり、異空間を楽しんだ。
純粋に生ってよくて、ファンじゃないけど楽しめる。
実際にやってみないと、行ってみないと何もわからない。
わかったつもりになるだけでもいいのは、評論家やTVでうんちくたれる人たちだけ。
あの人たちにリアルがわかってしまえば、何も言えなくなってしまう。



カラオケボックスがこんなにある日本は、歌手になる競争率は高いと思う。
競技人口が高いほど、競争率は上がる。
女の子で女優やアイドル願望が一切ないまま育った人はいるのだろうか?
お姫様ごっこをしたことがなくて、囲碁を打って三国志を読んでいた少女がいれば会ってみたい。




ようは才能はともかく努力を感じるわけです。
才能なんかを持ち出してしまっては、Jリーグも邦楽もあったもんじゃなくなる。
その前に自分自身があったもんじゃない。
見えない努力ほど美しいものはない。
図書館の空間には美があるのはそういうことです。




僕の頭の中にはアルコール性の毒と、言葉が詰まっているため長くなります。
チックスチックスは、カラオケボックスで言えばスイートルームです。
ショークラブのショーだとしても、超高級店です。
上手だな〜って思うかどうかは比較なんです。
本当は違うんですが、ほとんどは比較です。
そうじゃないと絶滅寸前動物だけ保護されるのは、つじつまが合わない。
マライアキャリーと比較しながらカラオケボックスに身を置いたら拷問になる。




純粋に楽しませていただきました。
前にも書いたことだけど、そうやって縁に流されることが大事なんです。
自分ひとりでは開けるはずもない扉を開ける。
そうでないと、世界は限定されてしまう。
どこの雑居ビルのスナックにも客がいるように、どこにも世界があり扉がある。
生きている間に、どれだけの扉を開くことができるのか?
それには人の縁に身を任せることと、自分を限定しないこと。




ただここで能無しのエセ評論家が一言感想を書くとしたら、スマートすぎる。
のどを簡単に通ってしまう。スパイスとなる癖がない。
魂がゆさぶられることや、鳥肌が立つことはないのです。
ただそんなのを客も作り手も求めないだろうから、スープに胡椒を入れなくてもいいんだろう。





危ない夜
スーツは着用しているものの、土曜日ということでテンションは高めでライブハウスを出る。
仕事での部下二人を連れて、一杯飲もうと店に入った。
ライブが始まるまで時間があったので、道玄坂裏を散歩した。
これも僕は大好きで、新しい道を通るたびに世界が広がる気がする。
商売繁盛を願っておかれた大社の周りには、風俗産業が商売繁盛している。
そう、神様は確かにいる。
そうやって散歩しながら、良さそうな店を探すことも大好きで、嗅ぎ分ける嗅覚がある。
人間には備わっていたものを、旅によって取り戻した。
いくつかピックアップしていた店から一つを選び、扉を開くと笑顔が待っていた。




部下と仕事以外で飲むのは初めてで、実は嬉しかった。それだけでブレーキの一つが壊れた。
ほとんどビジネスのための夜の会が入っているので、彼らと飲むのは今までなかった。
そんなのは仕事を始めてから初めてのことで、それを捨ててまで僕は外に触れることを選択した。
笑いと発見と情熱と酒を酌み交わしているうちに、後輩が「終電が・・・。」と言った。
この言葉がスイッチになってしまい、僕は完全に切り替わってしまった。
これで時間の前で無敵になった。



渋谷にいそうな人たちに電話して、こうやって縁はできているもので代官山に移動。
部下たちに会わせたかった人たちに会わせる事ができ、さらにテンションは上がっていく。
みなんそれぞれに会わせたかった人たちに会い、それが全部僕の会いたい人たち。
とにかく組み合わせがバッチリすぎて、そのへんの小説には勝ったと確信した。
自分の人生そのものが小説よりも面白くて、読み応えのあるもにしたい。
しかも一冊なんかで終わるような人生なんか歩きたくない。
次のページは用意されている。登場人物も用意されている。
あとは自分がめくるかどうか。そして小説を破ってしまうことができるか。
年を重ねれば重ねるほど、過去を捨てることは難しい。
しかし過去を捨てないと、常識は崩れないし世界は広がらない。
一冊しか本は完成しない。
カレーパンだけ食べているような人生はいらない。
カレーパンだけにしがみつく人生もいらない。




役は一つじゃ飽きちゃうよ。
崇められることもあれば、軽蔑されることもある。
いろんな役を演じてみたいじゃない。




話を戻すと、そうやって完璧なことに嬉しくて祝杯をあげまくった。
こっから先は超断片的にしか記憶がない。
今こうやって生きていられるのは、タバコを吸わなかったからだろう。
タバコの吸えない店だったのが幸いした。
なぜかよく行く池袋のバーにいた。
吸い込まれていたと言ったほうが適切だろう。
カウンター越しにバーテンダーと何を話したか、何を飲んだかさえ覚えていない。
ましてや時間はここでも存在しない。




そうやって完全に壊れた僕の身体は、すべてにおいて制御不能になっていた。
動物というよりも獣で、草食系ではない。弁当も作れない。
人として目を覚ますと、心臓が誰よりも働いていた。
何度もくじけそうになりながら、身体を起こし起き上がった。
すべての選択は優先順位だ。





お互いのリング
デッドラインをさまよいながら、水道橋に到着。
お客さんからRISEという総合格闘技の招待を受けていたわけですが、心も身体も僕のものではない。
あ、今の自分は人に素直に優しいと思い、自分が酔い状態であることは気づいた。
お酒で人の本心がわかるとすれば、僕は優しいはずだ。それかいい加減なだけか。



リングサイドの席にいるのに、リングで戦っている選手たちと同じように自分と戦っていた。
選手たちよりも水分を補給し、会場を出るまでに計3リットルのお茶を飲み干した。
そして普段は食べないチョコレートを体内に送り込んだ。
心臓のビート刻みはトランスよりも早く、こんなところで死んだら笑いものだなって思ったら、ちょっと怖くなってきたので席を立ってトイレに駆け込んだ。しかし水分を入れても入れても、こういうときは尿意はわかない。鏡の前で、自分に暗示をかける。「よかったじゃないか、これでネタが増えたよ」
そう、そしてこうやって新しい世界も知ることができた。
いや、こんなデッドラインは知らなくてもいいのかもしれない。
知らなくてもいいこともある、でも知ってから「知らなくてもいいこともある」と知るわけだから、やっぱり知っていたほうがいい。そうじゃないとリアルじゃない。




試合も思っていたよりも長くて、5時間にわたり試合観戦しながら試合をしていた。
こんな身体でも家でノックアウトしていることを放棄して立ち上がったのも、優先順位。




格闘技に対して興味のかけらもない僕のような人が見ても、生は面白い。
チックスチックスとRISEの両方を見に来る人はいないだろう。
あきらかにジャンルと人種が違いすぎる。
僕はどっちでも、たとえ人形遊びでも楽しめる人になりたい。
それには、世界を限定しないことだ。
愛は無限にある。




そうやって今日を迎え、思うことはいくつもある。
反省をすることも多いが、過去は変えることはできない。
しかも僕がどうこの世界で暴走しようが何しようが、世界は変わらない。