濃度120%


せっかくフランス、イタリアと来ましたがスペインにリターンしました。この旅を始めてから、一番の濃い1日を送りました。3日分は動いた気がします。




6時半起きて、高山さんのホテルまで行く。
まるで宿泊者のような顔をして、アジア人が2割いるホテルのブレックファーストへ。パン以外の食物を朝食として食べてのは、いつ以来なのだろうと考えながら、ベーコンや玉子焼きをパクつく。F1に向かう、楽しそうな高山さんの笑顔を見ながら、僕も楽しくなる。人間、やっぱり笑顔ですね。


せっかくなので、僕らもF1会場まで行ってみようと思い、一緒にF1会場の最寄り駅まで行く。しかし僕らはここで時間切れ。F1の音も聞こえない駅から一歩も出ることなく、リターンした。ここで高山さんたちとはお別れ。あまり時間を共有できませんでしたが、本当に濃い時間を過ごす事が出来ました。有難うございます。





急いで駅まで戻り、今まで数え切れないほどやってきた荷造りを5分でしてチェックアウト。昨日も食べたアイス屋で、昨日と同じようにほおばってから、ドゥオーモへ。室内から見る巨大で繊細なステンドガラス、そして厳かな建物が作り出す空間で、自分自身が静寂になった。
手を重ねて祈っている人達、十字架を見つめる人達、そういったものを見ながら僕にとっての神の象徴ではないが、根っこは同じなんだろうと考えた。僕にとっての神は宇宙を含む自然であり、僕にとってその象徴はない。それが無宗教という呼び名なのかもしれないが、神を否定しているわけではない。




そして急ぎ足で空港に向かう。
むかうはバルセロナ。え、バルセロナ
せっかくここまで陸路で来たのに、振り出しに戻ります。
バルセロナに着いて、急いでヒデキの友人のさとみちゃんと待ち合わせてチケットをもらう。急いで宿まで行ってチェックインして、急いでスタジアムへと向かう。もう走りっぱなしです。






スタジアム行きの地下鉄に乗る。
女の子に告白するときのような気分で、落ち着かそうにも心はぶれたままで定まらない。あと何駅と何度も数えては、ノドの渇きを覚える。窓に映る自分の顔は、こわばったまま。列車の中に赤と青のユニフォームが増えるたびに、現実に引き戻される。駅を降りてスタジアムまでは覚えていないし、ペンも動かせていない。吸いつくかのようにスタジアムにむかって早歩きしていた。


初めて目にするカンプノウ
情熱を一滴も外に漏らさないであろう大きな壁に囲まれたコロシアム。
長い長い階段を上り、スタジアムに入った。
足を踏み入れた瞬間から、席に着いてしばらくするまで覚えていない。
だが相当の興奮状態であったことは確かだろう。
記念にしようと思ったチケットも、入場して10分後には紛失していた。
日本にいたら警察に行ってめんどくさい書類を書いてまでも、紛失届けを出したかもしれないくらい悔しかった。


シートは上の上で、選手の顔までは判別できない中、プジョルだけはプロレスラーのような体格ですぐにわかった。あんな人からタックルされたら死ぬな。
試合が始まる。アンリとメッシは出ていない。
マルセイユにいるときの夜、バールの前で地元の人達がテレビにかじりついていて、テレビにはフランス代表の試合が映っていて、そこにアンリがいて点を決めてインタビューされていた。あれからまだ2日だから出ていないも当然か。
メッシはサブだったが、出ないだろうと諦めることにした。



試合は終始バルサペース。
動く芸術に絶叫と全身で反応して、一瞬たりともピッチから目を離すことは出来なかった。点は入らないまま時を忘れているとハーフタイムになったが、身体を動かすことができないまま後半がスタートする。そして後半17分、サッカー界で世界3本の指に入る芸術家、メッシが登場することになる。
1人の芸術家の登場で、スタジアムの何もかもが変わる。
彼にボールがわたると、スタジアム中が緊張する。
何が起きてもいいようにと、選手も観客も準備をする。
準備をしても、彼のボール捌きによって脳が揺らされてバランスを崩す。
彼はそうやって、ドリブルで相手選手をかわしているのかもしれない。
今までおとなしかったエトーも、別人のようなプレーをする。
やっぱり動く天才は重なり合った時に、天才を発揮する。




そして相手選手のどうでもいいハンドによってPKを獲得する。
キッカーはもちろんメッシで、ボールがネットに触れた瞬間、スタジアムに溜まっていたエネルギーが爆発した。寒さに震えていた身体にもエネルギー熱が行き渡る。このまま試合が終わればプロレスよりも筋書き通りになってしまう。
残り15分を切ったところで、相手のなんでもないフリーキックが選手に当たり方向が変わり、バルサのゴールネットを揺らしてしまった。KYです。


スタジアムは今までに聞いた事もない静寂に包まれ、それを察して風まで止んでしまった。静寂は試合終了の笛が鳴るまで続いた。空気が変わるとは、このことですよと教育実習で教わるような、わかりやすい切り替わりだった。



この試合で目立っていたのはシャビ。
彼のフェイントに全選手が傾いていた。
カンプノウを興奮を持ち帰りながら、バールでビールとサンドイッチにありつく。



深夜
ビールを飲んでいると、なおちゃんからの電話が鳴る。
どうやら僕ら待ちのようだ。
2つ離れている駅まで、本日最後のランニングをする。
バルセロナに帰ってきた理由は、試合を観るためだけはない。
ひできのバースデイをドッキリで祝うため。
この人から見たらくだらないドッキリをするために、ヨーロッパを走り回ってきた。
ひできが居候しているさやかちゃんの家に着く。
チャイムを鳴らすとヒデキが出てくる手はずもしてあり、
チャイムを鳴らすと何も知らない顔をいたヒデキの顔があった。
ハッピーバースデイを歌いながら室内に入る。
この一瞬にすべてが詰まっている。
彼の驚く顔が見れたし相手のどうこうより、こっちがしたかっただけだし。
なおちゃんと、ヒデキの友人さやかちゃんと、さやかちゃんの彼ベン君、さやかちゃんの友達さとみちゃんと、ベン君の友達カーディーとヒデキの誕生日を朝まで祝った。僕は4時半に意識を失った。
今までのハードスケジュールをこなすための緊張と、サッカーの興奮と、明日はオフだというゆるみと、すべて終わった充実感、そしてヒデキの日ということの重なりで、いつも以上に開放された。酒は人を解放する。